不思議な空間

芦屋の住宅街にその店はある。でも、その店の周囲だけは、芦屋ではない。歩道に面してサンデッキがありパラソルが並ぶ。一歩店内に入ればそこはフランスの地方都市かパリの下町のいわゆるビストロ。店の真ん中に巨大な黒板がぶら下がり、本日のスペシャリテがずらっと並ぶ。スタッフはほとんどが外国人。英語でしか話したことはないが、英語圏の出身かどうかは「?」

チープなテーブルクロス。素朴なキャラフェでサービスされるワイン。(もっともたいがいはボトルでオーダーするが)いつ行っても必ず外国語の聞こえてくる店内。そして、料理そのものも日本人に媚びたりしない全体的にしっかりした味付け。大げさではなく、ここに来ると日本に居ることを忘れることが出来る。

例えばテリーヌに使う脂肪。おそらく日本より寒い国に生まれ育った彼らは脂肪が必需品として育ち、美味しいと思って使っていると思う。良し悪しではなく、ラードはせいぜい揚げ物用、ヘットなんかすき焼きでしか見かけない、そんな国の料理人がテリーヌの食材として脂肪を使うのとはおのずと違ってくる。

もうひとつこの店でうれしいのは、ここまで「異国情緒」たっぷりなのに、ちいちゃな日本のおばあちゃんやいい感じの老夫婦が普通にテーブルについている図によくでくわすこと。その店は『au limo(オ・リモ)』といいます。
by hirorin330 | 2004-10-04 11:00 | 美食