チェーザレ 破壊の創造者 8 / 惣領冬実

チェーザレ 破壊の創造者 8 / 惣領冬実_a0022024_1703030.jpg


はじめ、西洋史を志していたころ、
聖職叙任権闘争やヘンリー8世の国教会など、
キリスト教会と世俗権力の対立に興味があった。

聖職叙任権闘争と言えば、「カノッサの屈辱」。
雪のなかひざまずく神聖ローマ皇帝の絵が有名。

ヘンリー8世などは、離婚が目的としか思えないが、
絶対君主の登場を準備したのも事実。

エリザベス1世は、ヘンリー8世とアン・ブーリンの娘。
幼い彼女を生かしておいた宮廷も不気味。

乱暴ながら、一言で言えば、
宗教の束縛から自由になったものの勝ち。

いやいや、『チェーザレ』の話だった。
8巻では、レコンキスタが成り、父が法王に就いた。

その年、1492年。
いよいよ佳境である。

この時代を理解することは、
現代のわれわれには簡単ではない。

16歳で「司教」になったり、
そもそも、「法王」の息子が存在したり。

が、マフィア・ヤクザ映画にこの時代を見ることができる。
と、思う。

いささかスケールは小さくなるが、
権謀術策を尽くして「知事」あたりに上り詰めた父。

その御曹司が才能豊かで、野心に満ちていて、
権威を利用しつつ権力を掌握する。

家柄よく、政治力もあり、才能あふれる若き理想家。
ヒーローの一つの典型だろう。

残忍な民主主義の敵のように語られることも多い、
チェーザレ・ボルジアだが、まぎれもなく英雄。

時代が生んだ寵児という見方もできるかもしれない。
そう言えば、コロンブスが出港したのも1492年。

この年は、ヨーロッパの一大転換期と言えるだろう。
ちなみに、この前年イングランドにヘンリー8世が生まれた。

生きて暮らしていた人には、大変だったかもしれないが、
現代日本人の私には、この時代の活力が眩しく映るのだ。

なにせ、凡庸な人生なもので。