HYMNS SPHERES / キース・ジャレット

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学生時代の私がバッハを知らずにいたら、
もっとほかの道を歩んだに違いない。

そういう演奏のLPの復刻CDがやっと出た。
さっき届いて、早速、聴いた。

直訳すると、「讃美歌 球」
キース・ジャレットの演奏。

今聞いてもこみ上げてくるものがあるが、
若き日のあれこれを少し語ろう。

つまり、つまらない話。
洒落ではないが。

ジャンルとしては、ジャズに分類される、
キース・ジャレットのピアノ。

ショスタコーヴィチの大曲など、
実は、クラシックの演奏も多い。

このアルバムは、学生時代に発売された、
パイプオルガンによる演奏。

告白すると、大学のチャペルでは、
私もパイプオルガンを弾いていた。

キース・ジャレットの即興的ジャズピアノは、
当時、学生必聴と言っていい演奏でもあった。

それにしても、だ。
パイプオルガンだ。

しかも、国宝級と言ってもいい、
K.J.リープの歴史的名器を使っての演奏。

あの夜、私がどんな思いで、
回転するレコードに針を乗せたか。

そして、その作業をあと3回繰り返した。
そんな時代だ。

打ちのめされた。
冒頭の「HYMN」で、すでにノックアウト。

9つの「Movement」をはさんで、
最後に再び「HYMN」。

たとえば、オルガンのタッチは、
ピアノとは全く違う。

繊細なタッチ、というよりは、
鋭く深いタッチが要求される。

それは、楽器の構造上によるもので、
歴史的な楽器ほど鍵盤は、深く重い。

ところが、キースは、それを逆手にとった。
鍵盤にかける力をゆっくり変化させたのだ。

すると、複数のパイプに徐々に空気が流れ、
吹き始めのバグパイプのような効果が出た。

やられた、と思った。
楽器を熟知して、駆使している。

とくに、鍵盤にかけた力をゆっくり抜くと、
音程は不安定になり、やがて、か細く消える。

まさに即興演奏だ、と思った。
敢えて言うと、ジャズだった。

極東の学生がすでに知っている名器で、
ここまで先鋭的な演奏をするとは。

カトリックらしい天上風の甘い響きを持つ、
この楽器ならではの演奏だと、今も思う。

やっと再会できた、と思ったら、
You Tubeに全曲を見つけた。

これが、良い時代、なのだろうか。
音盤に針を乗せるあの緊張感はどこへ。

便利な時代になったかもしれないが、
音楽の再生にも敬意を払って欲しい。

本当の豊かさはそこにあるように思う。

ああ、オッサンの説教になっちまった。



by hirorin330 | 2013-02-02 18:09 | 音楽 | Comments(0)