マンボウ
3人ともちょうど親の世代でもあったが、軽妙洒脱な文章が楽しく、クスクス笑いながら、こういう大人になりたい、と、なんとなく思っていた。
ただ、ちょっと違和感があったのが「マンボウ」だ。活気と生命力にあふれた思春期の少年には、「マンボウ」への憧れは、本当には理解できなかった。
ふと本箱の片隅のこのフィギュアに眼が留まった。今ならわかる、マンボウの浮世離れした浮遊感への憧れが。ちょうどあの頃の北杜夫の年齢に達していた自分にも気づいた。
大阪の「海遊館」のミュージアムショップで手に入れた海洋堂のフィギュアだが、姿かたちから、すっとぼけた表情まで、実によく再現されている。ああ、マンボウになりたい。