ワインと天婦羅

天婦羅を食べに行って、ワインがあれば、と思うことはあまりなかった。
だから、「ワインと天婦羅」を売り物にする店に興味があった。

場所は、「ハービスエント」、ブランドショップのひしめく話題のビル。景気は底を打ったのかもしれないと錯覚するような、豪華な建物。食事の予感は、揺れた。この豪華さ、吉か凶か。

しかし、ウッドを多用した内装は、落ち着いた上品さが感じられ、
「バブリー」で済ませるのは、ちょっと気の毒かもしれない、とも思った。

その5階、大阪中央郵便局を目の前に、梅田の光の洪水を眼下にその店はあった。
むこうは、ヒルトンプラザにリッツカールトン。最近の西梅田の象徴的位置だ。

黒服の男性に迎えられたが、ソムリエをはじめ、料理スタッフは和装(作務衣)。
ん?このソムリエ、見覚えが・・・。

ワインリストは、さすがに充実していた。シャンパンだけで二十数種のラインナップがあり、
泡・白・赤、すべてグラスワインも期待できそうだった。

で、おすすめのシャンパン、『ラミアブル、グラン・クリュのエキストラ・ブリュット』から。
「エキストラ」と言うほどでもないが、キレがあって香り高く、天婦羅との相性もいい。

前菜にホタルイカ。茗荷とヌタが添えられ辛子酢味噌でいただく。手入れも完璧。
お造りはヒラメ尽くし。刺身にえんがわ、薄作りのなかにはウニが入っていた。

肝心の天婦羅は、魚介9品、野菜5品。5回に分けて出た。
クルマエビは甘くプリプリで、白子や山芋に包まれたウニも美味。

はじめのクルマエビとアナゴの頃には、次のワインを心配した。どういう位置づけになるのか、とちゅうで出された煮穴子も絶品。「料亭とワインショップのコラボ」に納得。

二本目も白。アルザスを選ぶ。
赤だったらどんなワインを提案してくれたのか、ちょっと心残りではある。

しめは、天茶、天丼、かき揚げ+ご飯などから、デザートも数種から選べる。
とどめにまたもや白のグラスワイン。

確かにワインの充実した天婦羅屋さんはめずらしく、
こういう楽しみ方に今まで気づかなかったのは、ちょっと悔しい。

思い出した。このソムリエ、三宮のワインバー『リセット』のソムリエだった人だ。
帰りに名刺をいただいて気がついた。なるほど。しかし、じゃあ、『リセット』は?

人と天婦羅を食べるときは店を決めていた。今はないが、宝塚ホテルの『甲陽園・つる家』。
大阪の新阪急ホテルにもあった。驚いたことに大阪も、今日で営業終了だそうだ。

この店を知らなければ、今度は「天婦羅難民」になるところだった。
このお店、名前は、『あげさんすい』 と言う。
by hirorin330 | 2005-03-31 16:36 | 美食