SCIROCCO シロッコ
まだドイツが二つあった頃、私は機会あるたびに「調査旅行」と称して留学先のドイツを離れスペインやフランスに遊んだ。そこは、全てが明るく幸福感に満ちていた。オードブルとパンでワインが飲めたら幸福な私には、パラダイスとさえいえた。
どんな「居酒屋」でも「食堂」でも、日本人に興味を示し、飲めるとわかるとよろこんで受け入れてくれる。もう、それは、うるさいくらいに。そして、スペインや南フランスでは、太陽が出る限り外で食べなければ罰が当たる、くらいの勢いで料理を外へ運ぶ。
そんな昼食の場では、常套句があった。「何故ドイツなんだ?フランス(スペイン)へ来い。」「お前は、ドイツ的じゃない。向いていない。」などなど。
気のいい居酒屋の親父が私の呼び名を決めてくれた。
乗っていた車の名前、「シロッコ」。
なんと、安易な。
せめて「ひろし」くらい覚えてくれてもよさそうなものだが。
シロッコは、アフリカから地中海を渡って吹く強い南風。北国ドイツのフォルクスワーゲンが自社の3ドアハッチバッククーペにつけた名前としては、洒落ている。3万キロ程度の中古で買って、3年で5万キロちょっと走って、売って帰ってきた。
こんなところに住んで、
こんなになって走ってました。
さすがにこれでは走れないけど、東独では、なにかとイチャモンつけられたなぁ。