ヒラメの赤ちゃん

フレンチやイタリアンはもちろん中華も焼肉も、ジャンキーなスペアリブやバーベキューだって美味しくいただく私だが、日本人でよかったと思うのは、やはり新鮮な刺身を食べるときだ。

ヨーロッパにしばらく暮らしたが、食生活での苦労は、あまりなかった。むしろミシュランやゴーミヨーを片手に本格フレンチをめぐったり、楽しい思い出のほうが、ずっと多い。

それでも、時々無性に食べたくなるのが、大きく分けて寿司・刺身、ラーメン・蕎麦・うどん、そして、明石焼き・たこ焼きの3グループだ。ちょっと多いか。では、しぼろう。やはり刺身、だ。

冷酒のグラスを片手に、こってりしたブリ・ハマチや大トロをたまり醤油に山葵を効かせて食べる刺身は、当然美味い。だが、もちろん刺身の楽しみはそれだけではない。

実は私は、薄造りが好きだ。フグ、タイ、ヒラメ、カレイ。もみじおろしに小ネギと呼ぶちょうどフレンチのシブレットのような細いネギを4~5センチに切った薬味をそえ、ポン酢でいただく。

一口に白身の薄造りといっても上品で淡白なフグから脂の乗ったタイまで、これまたさまざまな美味しさが楽しめるのだが、なかでもヒラメ、とカレイははずせない。

以前、大分で食べた「城下カレイ」はほとんど幻なので、ここでは敢えて語らないが、ヒラメは庶民の味方でもある。普通のスーパーでも短冊で売られているし、見るとつい買ってしまう。

そのヒラメが、生まれてまもなくは、実は、他の魚と同じく、左右対称で、しばらくして眼が移動し、骨格も変化すると言う。それを見せてくれるというから須磨に走った。

2週間ほどで、親と同じように「底生生活」(そう呼ぶらしい)になるという。
これこそ「期間限定」だ。
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なるほど、いるいる。フナや金魚のように泳いでいるもの、もうすでに水槽の底に親同様に平べったく沈んでいるもの、そしてその中間期で、水中を斜に構えて泳いでいるもの。
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ただし、小さい。1~2センチだ。ピンボケの言い訳ではないが、小さくて半透明でよく動くので、明晰な画像をゲットできなかったのが残念だ。

人生、斜に構えるのは、お互い様だが、話を聞いていなければ、瀕死であっぷあっぷ状態の稚魚では、思ってしまうほど、危なっかしい存在だ。大きく美味しく育つんだよ。

先日、「京風」をうたう居酒屋でも「タイのカルパッチョ、山葵・コンソメジュレ添え」というメニューがあった。やはり日本人に生まれてよかったとは思うが、正直、「雑食」の感も否めないか。
by hirorin330 | 2005-05-16 14:36 | 美食