杖か棒か
指揮棒をドイツ語で
Taktstock(タクトシュトック)という。
略して、タクト。
しかし、直訳ではない。
直訳だと「拍子をとる杖」。
「杖」になる。
さかのぼれば、バロック時代、
ジャン=バチスト・リュリが有名。
当時は、長い杖で床を鳴らして、
拍子をとったようだ。
勢いあまって、自分の足を打ちつけ、
傷が化膿して、感染症で亡くなった。
ルイ14世の回復を祝う演奏会でのこと。
なんとも残酷で皮肉。
現代でも軍楽隊などのバンドは、
長いバトンで指揮をするが、その名残かも。
一方、英語で杖は、wand という。
こちらはいささか、魔術めいている。
『指輪物語』でガンダルフが使うのも、
『ハリポタ』で頻繁に使われるのも、杖。
長さや存在感がまったく違うが、
日本語では、杖。
ガンダルフが炎の魔物と戦ったとき、
大見得を切って地面を打ちつけたのは、杖。
ホグワーツの登場人物が、みんな持っていて、
魔術を駆使するのも、日本語では、杖。
魔法の杖は、むしろタクトに似ている。
長さも使い方も。
音楽を思いのままに操るのも、
魔法を発動するのも、ある意味似ている。
いや、実は、買ってしまったのだ。
スネイプ教授モデルの杖を。
『ダイ・ハード』での悪役の昔から、
アラン・リックマンのファンだ。
『ロビン・フッド』の悪代官役での
コミカルな演技もよかったし、
『マイケル・コリンズ』でも、
苦悩するデ・ヴァレラ役が印象的。
『パフューム』では、町の有力者であり、
娘の悩める父でもある男を、見事に演じた。
おっと、長くなってしまう。
閑話休題。
USJに行く前から決めていた。
買うなら、スネイプ教授モデル、と。
で、ワクワクルンルンで買ってきた。
意外に重く、実用性には疑問を持った。
ら、説明書にちゃんと書いてあった。
装飾用 ※おもちゃではありません。
そうか、振り回しちゃいけないのか。
遊んでて、折れても嫌だしな。
ちゃんと従おう、12歳以上だし。
少し目が覚めた。
私の学生たちは、スネイプ教授の杖を
指示棒代わりに使う私を見る機会を失った。