プリプリ海老カツ弁当
一方、初めて「海老カツ」という料理に出会ったときの不運が、今も私の心に影を落としてる。
前後の状況は記憶していない。水族館の帰りか、買い物のついでか、
トンカツ店の6~7番目のメニューに見つけた「エビカツ」に幼い私は、心を動かされた。
父は、エビが食べたいならエビフライにすれば、とアドヴァイスしてくれたが、
未知の物に対する興味と憧れは、押さえきれなかった。
がっかりした。ナイフを入れると、まあ、そこに確かに赤いエビらしき身は目に入ったが、
口に入ったそれにエビの味を探すことは至難の業だった。
海老は高級食材で、特にクルマエビのいいものは、エビフライにはもったいない、
そういう一種の矛盾した状況が長かった。エビカツにいいエビはまわってこなかった。
そのせいか、「海老カツ」に使われるエビは、探さなければ見つからないようなことも多く、
ながらく位置として「B級」以下にあったように思う。
その後、クルマエビの養殖が普通になり、あいかわらず高級食材とはいえ、
スーパーでもピンピン跳ね踊るクルマエビが並ぶようになった頃から様子が変わってきた。
たとえば、「つなぎ」の白身魚のすり身の割合が減ってきた。
あいかわらず出自は不明だが、エビもぶつ切りでゴロゴロ入るようになったと思う。
で、おなじみ「いかり」のお弁当シリーズ。
その名も「プリプリ海老カツ弁当」。「プリプリ」にそそられるではないか。
あいかわらず「B級」の位置に甘んじてはいるが、「偉大なるB級」と言えよう。
「プリプリ」というネーミングひとつでワクワクする私の学習能力に疑問も残るが。