Clothes Brush / KENT (ENGLAND)
このKENT(ケント)は、公爵でも州でもない。
英国王室御用達のブラシメーカー(創業1777年)で、その創立者の姓。
白い縁取りがあるほうが、カシミヤ、アンゴラ用で、
向こう側の黒いのは、ウール、ツイード用。
A.クリスティーのポアロシリーズに、伊達男を自任する探偵ポアロが、
相棒のヘイスティングスにコートのブラシがけをせがむシーンがある。
モナミ(わが友よ)あとであなたにもかけてあげますからね、
と、早々に袖を通したコートの背を相棒に向けるのだ。
こういった行為の意味を本当に理解するのは、極めてムツカシイ。
なにせ私は21世紀の極東に暮らす普通の日本人だから。
それでも、10年以上ブラシをかけ続けてくると、少しはわかってくることがある。
繊維の風合いを保ったまま、汚れを落とし、艶さえ出してくれるのだ。
ウールはもちろん、とくにカシミアやアンゴラの衣類で効果は顕著だと思う。
ジャケットもコートも、ブラッシングは、いまや楽しみでさえある。
キヨブタ(清水の舞台)の覚悟で買ったコートが、永く着られるのは嬉しい。
あとは、体型維持だな。