ロ短調ミサ BWV232 / J.S.バッハ

Messe in h-moll (ロ短調ミサ)。
BWV(Bach Werke Verzeichnis:バッハ作品番号)232。

J.S.バッハの遺したミサ曲。
オーケストラと最大8声部の合唱からなる大曲。

教会で演奏されることを目的としていて、
カトリックのミサ典礼にそって作曲されている。

ちなみに、200曲におよぶ教会カンタータを残したバッハだが、
ミサ曲は、12曲。その唯一といえる大ミサ曲。

彼は、敬虔なルター派プロテスタントだが、
それだけでなく、宗教の枠に収まる作品ですらない。

そもそも、バッハは、バロック音楽を完成させたといわれるが、
同時代においては、むしろ取り残されていた感は否めない。

現在、私たちが最初に習う、和声や対位法は、
彼の時代までに確立されたルールといえる。

当時の大家、J.A.ラインケンや、D.ブクステフーデが、
絶賛するまでもなく、それ以前の様式を高め、完成させたのがバッハ。

続くモーツァルトやベートーヴェンは、
そのルールを積極的に破壊し、より自由闊達に「個」を主に置いた。

しかし、この二人の晩年や最期を思うと、
必ずしも聴衆の理解が得られたわけでもなかったが。

最も厳しいルールの中で、可能な限り活躍した最後の音楽家、
それが、バッハだったと思う。

それゆえ、洗練された宮廷では、古臭いと疎まれ、
保守的な教会では、先鋭的過ぎるとしばしば糾弾された。

そのバッハが、宮廷音楽家任官の多少の野心と共に「典礼ミサ」、
という枠組みの中で彼の「世界」を表現したのがこの曲。

当初、ミサ・ブレビス(短いミサ・小ミサ)として作曲されたが、
加筆を重ねて現在の「大ミサ曲」へと発展したようだ。

以下、私なりの理解を何回かに分けて記事にしてみたい。
で、第1曲「キリエ」。

Kyrie eleison. Christe sleison. Kyrie eleison.
この六語で3部20分に及ばんとする大曲。

第1部
Kyrie eleison.(主よ哀れみたまえ)

荘厳な大合唱で始まる第1キリエは、やがて大フーガへと発展する。
これは、全曲を通じての信仰や意志を感じさせる構成だ。

第2部
Christe eleison.(キリストよ哀れみたまえ)

一転して、ソプラノとアルトの両ソロによる、
可憐とさえいえるデュオ。

先立つ弦の旋律も軽やかで、キリエのような悲壮感はない。
春の花畑に舞う少女のような曲。

第3曲
Kyrie eleison.

再び荘重な合唱による大フーガ。
全能の神の救いを求めすがりつくようなポリフォニー。

この3曲だけで、3部形式の完成された楽曲といっていい。
冒頭から圧倒されるスケールの大きさだ。

ためしにネットで検索したら十数万件がヒットした。
超人気曲らしい。

そこへ、いまさら何を語ろうというのか、自分でもわからないが、
私にとっても大切な曲であるのは事実。

しばし、お付き合いいただいて、
聴いてみようかな、とお感じいただければ、幸甚。


グロリアへ続く。



ロ短調ミサ BWV232 / J.S.バッハ_a0022024_1740354.jpg

by hirorin330 | 2008-03-25 17:40