アブサン
名前の由来ではあるらしいけど。
禁断の魔酒、アブサン。
やっと手に入れた。
といっても、普通の酒屋さんで手に入るし、
別段、非合法ということでもない。
ただ、19世紀末にあまたの芸術家たちが身を滅ぼし、
御禁制酒になったのは歴史的事実。
原料に麻薬成分があるとか、ないとかで禁じられたが、
今販売されているのは、その成分を押さえたもの。
早い話が、ハーブ系のリキュールなので、
アルコールとの相乗効果もあったのだろう。
事実、18世紀に医師がニガヨモギなどのハーブから、
薬用として開発した出自を持つ。
なぜかポピーの花がプリントされたグラスと
角砂糖をのせて溶かし、混ぜるためのアブサンスプーン付き。
アルコール度数が強すぎるためか、水で割ったり、
砂糖を溶かして飲むのが流儀らしい。
平たい板状のスプーンの上で角砂糖をのせて水を注ぐ。
にしても、淡いグリーンが美しい。
と、どうだ。
済んだ淡いグリーンが、みるみる妖しく乳化、白濁して行く。
なるほど、この神秘的な変化が、芸術家たちを魅了したのか。
恐るべし、アブサン。
とはいっても、現代ではその危険性も医学的に解明され、
禁止するほどのこともないのでは、という意見が主流とか。
ただ、かつて、己のあるかなきかの才能だけを信じ、
不安にさいなまれた「芸術家」たちが、酒で身を滅ぼしたのは確か。
で、お味。
ハーブの香りが強いが、どちらかというと、拍子ぬけ。
日本でも普通に売っているドイツのハーブリキュール、
『イエガーマイスター』とよく似ている。
アニスの香りが苦手な人には、どうかと思うが、
現地では、さんざん飲んだ〆にショットグラスでストレートを飲む。
すると、悪酔いしない。
と、信じられている。
アブサンの場合、伝説が独り歩きしたのだろう。
アルコールとハーブでダブルにラリれ、いや、酔えると思ったのだが。
結論。
ストレートで飲んでも、普通のリキュールだった。
が、規制前のレシピで作ったアブサンにたいする興味は、消えない。
飲兵衛というのは、あさましくできているようだ。