『不思議の国のアリス』
スクエアエニックスから出たフォーメーションアーツ。
ゲームキャラの作品が多かったが、珍しく古典に題材がとられた。
ディズニーのキャラクターをとりあげつつ、
原作刊行当時の挿絵の雰囲気も出している。
つまり、ある意味、ダークな表現も用いることによって、
ディズニー的なイメージを薄めるのに成功したといえる。
1. 「ウサギを追い、穴へ落ちて」
背面も手抜きはない。
シークレットガーデン風でいい感じ。
そういえば、トトロとも、こんな感じで出会うんだっけ。
ナルニアもそうだが、日常と異世界を結ぶ仕掛けは、スリリングだ。
2. 「巨大化アリスと白ウサギ」
巨大化したアリスは、シュール。
逃げる白ウサギは、対照的にコミカル。
建物と一体化してしまったかのような後姿。
窮屈そうな手足が、リアル。
3. 「キャタピラーからの助言」
ディズニーアニメでは、エキゾチックなBGMが流れていたっけ。
喫煙はあなたとあなたの周りの人の健康に有害です。
水キセルも忠実に再現されているが、
子供に煙を吹きかけるなんて描写は、今では考えられない。
4. 「いかれ帽子屋のお茶会」
「いかれ(mad)」の翻訳にも苦労しただろうな。
あのお茶は、私は、勘弁。
てっきりディズニーのキャラだと思っていた帽子屋。
1865年のJ.テニエルによる挿絵とほぼ同じ。
5. 「ハートの女王様とアリス」
厄介な女王とクロッケーをするアリス。
クロッケーは、ゲートボールの原型とも言われている。
これも現代なら動物愛護団体からクレームが付きそう。
可憐な少女が、生身の動物をマレーにしてプレイするのだから。
と、まあ、「原作のオリジナリティーを大事にするため・・・」、
なんて、「お断り」が入りそうだが、実に忠実に再現されている。
とは、言え、なぜ今アリスなんだろう。
きっちりした周年でもないと思うのだ。
ただ、噂によると、ティム・バートン監督による『アリス』が、
もうじき公開になるとかならないとか。
下衆の詮索はよそう。
いや、魅力的な古典であることは確かだ。