足踏みオルガン / ヤマハ

足踏みオルガン / ヤマハ_a0022024_19555570.jpg


ウチで一番古い楽器。
ヤマハの1937年製5ストップリードオルガン。

亡き母によると、戦災で以前のもっと立派な楽器をなくし、
避難先で就職が決まり、慌てて手に入れた品だという。

おそらくだが、
私が一番最初に耳にした楽器、ということになる。

そのせいか、弾いていると、小さなリードオルガンだが、
ピアノとは違った、一種の安らぎさえおぼえる。

成長して、ピアノ、パイプオルガンと私の興味は移って、
触れる機会は減ったが、大事な楽器に違いなかった。

ただ、いくつかのリードが不調で、残念なことに、
ストップによって、出ない音があった。

それが、何を思ったか、母の供養のつもりか、
父が、修復してくれる工房を見つけてきた。

京都のふたば楽器オルガン工房さんだ。
すべてをお任せすることにした。

修復が終わり、父も満足したのか、
私が引き取ることになった。

久しぶりに弾いて驚いた。
そのゆたかな音量に、だ。

もちろん、音の出なかったリードは修復されていて、
すべてのストップと鍵盤が機能している。

それ以上に、
空気の通り道が、見事に修復されていた。

私の知っているこの楽器は、4声を超えると、
ペダルを踏むのが忙しくなってきたものだ。

それが、なんと豊かな音量で、朗々と響くことか。
うれしい。

バッハは、オルガンは、肺が命、と言ったという。
たくさんのパイプに空気を送る必要からだろう。

リードオルガンも同じだ。
ゆとりある空気量が、ゆたかな表現を可能にする。

思えば、気付かなかったが、空気の通り道は、
あちこちで、くたびれ、息もれしていたのだろう。

弦楽器からすれば、一桁違うかもしれないが、
72年前の楽器がよみがえったことで、私は、狂喜している。

祝杯をあげよう。


ふたば楽器さん、ありがとうございました。
by hirorin330 | 2009-04-30 19:55 | 音楽