屋根の開くクルマ
引き出しの奥から出てきた。
ビートルのコンバーチブル。
縮尺は、たぶん1/160くらい。
メガネと比べるとこんな感じ。
かわいい。
オープンボディーのクルマは、ツボ。
コンバーチブル(英)は、形が変わることを意味するが、
愛車BMW330の場合、カブリオレと呼ぶ。
平成12年から乗っていて、
この11月、3回目の車検をむかえる。
まだまだ、乗る。
ディーラーもあきらめてくれている。
先代の通勤用325もカブリオレだったから、
もう、15年は、屋根あきに乗り続けている。
下世話に言うと、遊び人のイメージもあるが、
実は、むしろ、ストイックで硬派なクルマだ。
想像してほしい。
ヘルメットも被らず、時速100km出すことを。
快適で爽快ではあるが、
人は、身に余る移動速度を得たのかもしれない。
クローズドボディーで音も遮断されたクルマだと、
スピード感が鈍るという。
高速道路で気付けば制限速度を軽く超えていた、
というような話もよくきく。
屋根を開けたクルマだと、そうはいかない。
移動速度を確実に体感できる。
フルフェイスのヘルメットで二輪に乗るより、
よほど、風や自然と一体になれると思う。
それは、私にとって、
自己の内面への自問自答のときでもある。
だからこそ、手放せないでいる。
「前世紀の遺物」と呼ばれても。
いつか、はともかく、おそらく、次のクルマが、
人生最後のガソリン車になるだろう。
そして、確かに言えることがあるとすれば、
そのクルマの屋根も、きっと開くだろう。
うらぶれた中年男が、屋根の開いた車を走らせるとき。
その男は、テツガクしているのだ、と理解してほしい。
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