ラルマンディエ-ベルニエ 飲み比べ / シャンパーニュ

ラルマンディエ-ベルニエの1級畑、
プルミエクリュの飲み比べをした。

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1本は、スタンダードな「トラディション」。

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もう1本は、テール・ド・ベルテュ。
「ベルテュの大地」だ。

ノン・ドゼ。
つまり、「門出のロキュール」なし。

この2本の飲み比べで印象的なのは、
大地のミネラルとでも言える、風味の差。

ともに、ビオディナミをうたう製法で、
いわゆる有機栽培のブドウから醸される。

だから、表現によっては「土臭さ」ともいえる、
ミネラル感がどちらのワインにもある。

とくに、ノン・ドゼの方は強烈だった。
土の香りがする。

いや、とりあえず、いい意味での話だが、
これが苦手と言う人が多くても私は驚かない。

そもそも、モエの古酒に感動した私は、
「ノン・ドゼ」の呪文は解かれてしまった。

ビオワインの作り手たちの、
実験的精神、チャレンジんぐスピリッツは、立派。

が、伝承された技法には、やはり大きな意味がある。
思い付きだけでは、完全否定できるものではない。

ところで、ビオディナミのシャンパーニュを飲み比べた、
というのは、実は、少しおかしい。

いちど、ちゃんと「ビオ」を調べたいのだが、
とりあえず、私の知っている範囲で。

提唱者はオーストリア人、ルドルフ・シュタイナー。
ちなみにアルコールを飲まなかった。

だから、少なくとも、
ワインの葡萄のために考察された農法ではない。

ワインのビオディナミ、は、実は、存在しないのだ。
まあ、いささか屁理屈っぽくはあるが。

「バイオダイナミック農法」と呼ばれるのとも、
いささか趣が違うようにも思う。

シュタイナーが、提唱したビオディナミ農法は、
天体の運行に合わせた古来の農業暦を尊重する。

もちろん、いっさいの化学肥料を使わない。
古くから使われている肥料を活用した。

もっともシュタイナー自身は神秘思想家であって、
化学者ではなかった。

しかし、そこから、有機栽培の祖のように扱われ、
昨今の環境重視の世界観にも合致している。

ここまでは、まあいい。
ときは、第一次大戦直後のヨーロッパ。

世界で最初に化学兵器が使われた戦争の時代、
農業にも「化学」が持ち込まれたようだ。

それに対する危機感も強かったのだと思うが、
シュタイナーは、さらにエキセントリックだった。

有機肥料のほかに、占星術を重視したり、
水晶の粉をまいたり、少々宗教じみてもいたようだ。

今日は、牡羊座の農夫は畑に出てはいけない、
というような「星占い」ではない。

月と太陽の動きにくわえて、
黄道12宮の位置関係も考慮した、ということらしい。

有機農法による栽培は、環境負荷が小さい、
というのは、やはり事実だと思う。

そして、作物本来の自然な風味も生きている。
それも、まぎれもない事実だろう。

大地のミネラル分をブドウの樹を通じて吸収し、
ワインとして人間がいただくのだ。

命をいただいていることについては、
肉や魚と何ら変わらない。

1滴たりともおろそかにはできないのである。


さて、シュタイナーに触れる限り、
避けては通れないテーマがある。

敢えて記すが、シュタイナーは、
人種差別主義者だった。

ユダヤ人、アジア人、ネイティブアメリカンらを
退廃劣等人種と決めつけていた。

さまざまな弁護も試みられてはいるが、そのことも、
「ビオワイン」を不味くしているような気がしてならない。

私は、ビオやロハスを信じない。
経済用語がファッション用語に転じてしまっているし。

お題目はなくてもつくり手の熱意が伝わる、
そんなワインに私は酔いたいと思う。