実家発掘4 神戸銀行の手帖 他
やっと発掘した。
1974年の「太陽神戸銀行」の手帖だ。
前年秋に合併して名前は変わったが、
この年はまだ、神戸銀行時代と同じデザイン。
中央のコーポレートロゴは、
「太陽神戸銀行」に代わっているが。
今見ても美しく、品がある。
と、中からはらりとなにかが落ちた。
旧東ドイツ、
ドイツ民主共和国(DDR)の5マルク紙幣だ。
東西冷戦時代、オリンピックで大活躍した、
あの東ドイツだ。
東西ドイツのメダル数を足すと、
アメリカ、ソ連各1国より多かった。
西側も東側も味方にしたかったはずだ。
フランスの某大統領などは、再統一を恐れ、
私はドイツが好きだから二つあった方がいい、
という迷言を吐いたほど。
面白いのは、肖像。
5マルクというと、最少額紙幣。
西側との両替レートは、1:1が建前だが、
実際は、4:1とも5:1とも。
西の基準で考えると、ざっと500円。
「岩倉具視」見当となる。
あ。若い読者のみなさん。
日本には昔、500円紙幣があったんです。
閑話休題、肖像画。
トマス・ミュンツァーという宗教家。
マルチン・ルターと同時代人で、
ともに宗教改革を推進した。
が、ここらが、面白いと思うのだが、
ミュンツァーは、共産主義集落を指導した。
宗教そのものは「アヘン」として否定しつつ、
共産主義の実践者は、容認するのだ。
最小額紙幣と言う位置づけが、
その微妙な立場を表現している気がする。
裏は、近代的収穫風景だが、現実はいかに。
ただ、20円ほどで2リットルの牛乳が買えたのは事実。
共産党やソ連と言えば、「鎌とハンマー」だが、
東独の紋章は、ハンマーとコンパスだ。
工業や学問を象徴していたそうだが、
いまでは、郷愁さえ覚える。
私の学校の個人懇談予定などの書き込まれた、
母の手帖から何故この紙幣が出てきたのかは謎。
それでも、私自身「歴史」を生きてきた実感がある。
やはり、実家の物色は「発掘」と呼ぶにふさわしい。