クリムトの鉛筆

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誤解を恐れないで言うと、
芸術は退屈との戦いだ。

いや、下手な演奏や絵画の話ではなく、
芸術の発展は、多分退屈から生まれる。

昨日までの音楽や絵画は、
明日には、もう退屈になっている。

バロック音楽やルネッサンス絵画は、
いつしか古臭いものとして扱われる。

刺激や快楽を求める、
人間のなんと貪欲なことか。

その結果、楽譜には音がますます増え、
写実より感性や色彩が重視される。

やがて、芸術の理解や鑑賞には、
時間と金と教養が求められるようになる。

やれやれ。

ざっくり言うと、古くは、絵画はラテン語圏、
音楽はドイツ語圏が得意としてきた。

フリードリッヒなんてドイツの画家は、
一般には知られていない。

墓場や廃墟ばかり描いている、辛気臭い、
ドイツロマン派絵画が、実は私は好きなのだが。

で、19世紀末から20世紀初頭のドイツ語圏では、
その遅れを取り戻すかのように、絵画が元気だ。

フランスのアール・ヌーヴォーに呼応するように、
ユーゲント・シュティールが闊歩していた。

その括りにするには議論の余地もあるが、
グスタフ・クリムトは世紀末ウィーンで活躍した。

今年は、その生誕150年にあたる。
そこかしこでイベントもあるだろう。

ささやかながらこの鉛筆もその一つか。
端正でシンプルで華麗な金と白。

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鉛筆2本でみごとなまでに、
ウィーンの19世紀末を表現している。

感心して見惚れてしまうこと暫し、であった。
小市民な私は、もちろんこの鉛筆は使わない。
by hirorin330 | 2012-04-27 17:59 | 日常