かぐら / 三重県・伊勢市
きわめて軽いノリで足を伸ばした。
ざっと3時間で、伊勢内宮付近へ。
と、絶望的な渋滞。
とにかく、腹ごしらえ、
と、美味しそうな店を探した。
松阪肉『かぐら』に決めた。
新年もやっぱ、肉、っしょ。
予約もなしにすべり込んだが、
なかなかの有名店らしい。
レジには、判読のムツカシイ色紙が並ぶ。
大相撲の横綱の名前も見つけた。
玄関先で少し待たされたが、
期待に胸が膨らんだ。
通された部屋は、整った座敷。
日本料理店の一室。
真ん中に囲炉裏。
きわめて和風な造り。
品書きを見て、ハッとした。
「網焼き」とある。
私の子供の頃、
「焼肉」というと「網焼き」だった。
それは、現在のように韓国風焼き肉が、
一般的になる前のお話。
もう少し言うと、私の子供の頃、
韓国風焼き肉は、一種、禁断の料理だった。
よほどの通や美食家でなければ、
ちょっと近づきにくい店が多かった。
当時は、煙が多く出るせいか、
繁華街でも裏通りに焼肉店はあった。
当然、子供の私は、未体験。
ちょっと大人の世界だった。
そんな当時でも、もちろん肉は食べた。
ステーキだけでなく、網焼きで。
ステーキよりは薄く、すき焼きよりは厚い、
そういう微妙な厚みの肉を網の上で焼いた。
フライパンで焼くと、ステーキになる。
それも厚みがいささか貧乏くさい。
薄切り肉は、すき焼きかシャブシャブ。
やはり網焼きは、微妙な厚さだと思う。
霜降りの肉を網で焼いて、
余分な脂を落とすのがポイント。
ウチは、魚焼きのグリル網をひとつ、
牛肉の網焼き専用にしていたっけ。
囲炉裏の炭が準備されるあいだ、
懐かしい思い出に浸っていた。
そうこうするうちに肉が届いた。
松阪牛のロースとフィレ。
見事なロースの霜降り、
そして、懐かしいこの厚み。
ステーキより薄く、すき焼きより厚い。
しかし、感慨にふける余裕はなかった。
自分の所有権をちゃんと宣言しないと、
いくらでも侵略される。
焼くときにつけるタレも、
ニンニクは感じられない。
美味しかった。
これぞ、日本の焼肉だ。
日本の正月に
伊勢で日本の焼肉、「網焼き」。
今年も美味しいものに出会えそうだ。
ごちそうさまでした。
夜にも食べに来たいです。