四畳半神話大系 / 森見登美彦

四畳半神話大系 / 森見登美彦_a0022024_1732232.jpg


森見氏は、私の大学在学中に生まれた、
若い、いや、もう作家としては中堅どころか。

京大の農学部修士から、
国立国会図書館職員という経歴も異色。

この作品との出会いも、
例によって深夜のケーブルテレビ。

もともと、アニメは好きな方だったが、
最近のアニメには食傷気味でもあった。

なので、いつものように、
見るでもなく、見ていた。

と、驚いた。
私の若き日。

時代考証はどうなっているのか、
思わず調べたが、ほぼ現在らしい。

舞台は、作者の母校、京都大学。
私には縁のない学校ではある。

しかし、その薄汚く、胡散臭く、
実際にも匂ってきそうな生活感。

アパートと言っても風呂はなく、
便所も共同の四畳半一間。

これこそ、私の学生時代だった。
京大は、いまだに、こうなのか。

想い出話を許されたい。
あの頃、学生は、元気だった。

「下宿屋」という形態があって、
離れやときには母屋を間借りしていた。

当然、風呂も台所も共有で、
自室は狭く、普通、万年床。

う。
景色や匂いがよみがえる。

いや、私は、お気楽な自宅通学生。
ただ、下宿生にアパート派はまだ少数。

マンション暮らしの学生なんて、
お嬢様女子大学の学生ぐらいだったと思う。

徐々に「下宿屋」は敬遠されるようになり、
昨今は、マンションがデフォルトと聞く。

と、思っていたら、『四畳半神話大系』、
いまだに、あの世界観を維持している。

当時は、右肩上がりを疑わなかった。
だから、努力は報われると信じていた。

プライバシー意識の希薄な下宿屋に、
「ひきこもり」はあり得なかった。

授業に姿を見せなかったら、
きっと誰かに寝込みを襲われた。

その襲撃に加担することも多かった私。
いささか乱暴だったとも思う。

原作の小説やコミックも読んだが、
困ったことに、いまひとつ。

アニメのスピード感のある展開と、
声優の滑らかなせりふ回しは秀逸。

ネット上に動画もアップされているが、
つい、DVDで揃えてしまった。

空回りする恋愛事情もふくめ、
学生生活は今も不変、と妙に安堵。

そうそう、四畳半の畳をなぞった、
「四」の漢数字にも妙に感心した。

ちょっとくたびれた中年諸兄諸姉。
おすすめしたい。一見の価値あり。
by hirorin330 | 2013-07-06 17:04 | 映画・DVD