うどんのすき焼き やまもと / 宝塚
先輩方の後ろについて、
この日は、宝塚へ。
宝塚南口から宝塚の周辺は、
かつて、一大歓楽街だった。
旅館、料亭、芸者置屋等は、
そのほとんどが姿を消した。
生き残りに成功した老舗旅館は、
近代的なホテルに姿を変えた。
その巨大ホテルのおひざ元、
今では住宅街となった一角に、
昔の風情を残すお店があった。
もとは、置屋さんだった、と聞いたが、
昭和の気配が色濃く残る『やまもと』。
出されるメニューは、
「うどんのすき焼き」一本だとか。
大阪人には「うどんすき」として知られる、
うどんの鍋料理。
「うどんすき」は『美々卯』の登録商標らしく、
ほかでは、その名前は、使えないらしいが。
讃岐うどんでも大阪うどんでもない、
腰があるのに優しいうどんの鍋料理。
具だくさんの鍋に、うどん、もち、雑炊、
結局、三回、食べつくした。
うどん、もち、米が残らなかった。
一粒、ひとかけらも。
そもそも、出汁が美味い。
そして、飽きない。
予約の人数分しか打たれないので、
追加のうどんは、ない。
そんな職人気質のご主人も、
挨拶をすると、物腰は柔らかい。
ああ、大人の世界で育った、
大人の食事なのだ、と思った。
春分過ぎて、なお寒い夜、
身体の芯まで温まった。