にくづくし 『離れの宴』 / 神戸市灘区
確かここを山手に曲がれば・・・。そこは漆黒の闇。
ちょっと大げさか。『注文の多い料理店』じゃあるまいし、21世紀の神戸だ。
千こと千尋が銭婆訪ねたような不安と期待。
営業時間を早くも終えた市場街の外れは、その店が唯一の明かりだった。
そこだけほんのりと明るい店に近付くと気分は一変。
お肉屋さんの惣菜持ち帰りコーナーのような店頭脇には無造作にシャンパンの空き瓶が。
全部「MUMM」。ムム、デキル。
「山本精肉店」直営『離れの宴』だ。
予算や希望に応じて工夫してくれるコースメニューをいただく。
肉の倍の野菜を食べなさいと躾けられた人なら卒倒間違いなしのコース。
オードブルに始まって焼き物・煮物・シャブシャブ・ステーキ、そして「〆」。
その全てが「肉」だ。
オードブルは、カルパッチョ、たたき、アキレス腱のにこごりなど7種。
この日唯一の豚肉、「山本精肉店特製チャーシュー」は、高級中華の味わい。
残念ながら名称は覚え切れなかったが、精肉店直営ならではの内臓系もあった。
が、甘辛いタレでどれも同じ味になる食べ方ではなく、少量ずつ新鮮な肉として味わえる。
「カルビと皮のあいだ」といった、少量過ぎて流通しない部位の肉がまた、美味い。
煮込み料理、「頬肉の赤ワイン煮込み」は、まごうことなきフレンチ。
夏なのでシャブシャブはどうかと思ったが、肉はタン・モモ・ロースの3種。最高級和牛ロースの霜降りはもちろん、モモにまで見事なサシがはいって初体験のタンシャブも美味かった。
一度の食事でシャブシャブとステーキを食べたのは初めてだが、とどめとも言えるロースのステーキが一人当たり100グラム出される。さらに100グラムでも軽くOKの美味さ。
さらに驚きは「〆」。シャブシャブの出汁をスープベースに「ラーメン」が供された。
バブル崩壊とともに消えた、ある会員制高級中華のタンメンに通じる味だった。
また、ご主人のただならぬワイン好きがうかがえるリストも凄かった。
パーカー氏の評価前にサントリーが押さえ、価格高騰間違いなしというボルドーも飲んだ。
常連さんらしき人たちは、「オードブルとステーキ」というようなオーダーが多いようだが、
私なら「コース」をオススメする。ある意味、「接待」向きでもあろう。
バックナンバーを調べると、昨年3月の『あまから手帖』には、
「アジアの屋台の感覚とヨーロッパのテイストの合体」と紹介されていた。言いえて妙。
その後に飲んだアルコールのせいもあるが、ちょっと現実離れした体験だった。
明るいランチタイムに行ってみたい様な、昼間はどうしてもたどり着けないような・・・。
画像は、More に載せます。
ベジタリアンの方はご注意ください。
あのあかりがそのはず・・・だといいなぁ。
ネブカドネザルボトル(レギュラー15本分)を間近に見たのも初めて。
7種のオードブル。画面奥の白いゼリー状のが、「アキレス腱のにこごり」
焼き物。恥ずかしながら「頬肉の赤ワイン煮込み」の画像はありません。
シャブシャブの肉。参考までに、これは2人前。
ステーキ。これも、確か2人前。
CLOS LES LUNELLES
やや軽さの感じるミディアムボディーだが、香りの華やかさ、味のバランスは抜群。
下世話な話だが、レストランではあり得ない価格¥6000
下世話ついでに今回のコース、一人¥4800 も特筆すべきか。
昼食時ということもあるが、画像を見ながら腹が鳴った。生粋の肉食人種を自覚する。