『バッハドキュメント』
vinofl19162 さまから、コメントでご指摘があったが、
バッハは、コーヒーもワインもビールも好きだったようだ。
教会音楽の大家で、「楽聖」なんて呼ばれることもあるが、
カトリックではないし、決して「聖人」ではなかった、と思う。
いや、「聖人」に祀り上げたい気持ちは、わかる。
が、事実を曲げるのはいただけないし。
バッハには、コーヒーカンタータという世俗カンタータがあるが、
昨今の極東の島国のカフェ以上に先端を走っていたようにも思える。
学生や若い楽団員との付き合いも多かっただろうから、
カフェでコーヒーを飲んだとしても不思議ではない。
タバコも嗜んだようだが、遺品目録の中にパイプは、ない。
嗅ぎタバコ、噛みタバコの類だったのだろうか。
そんな不確実な情報が多い中で、確実な一次史料もある。
『バッハドキュメント』に手紙が残っている。
1748年10月6日付のその手紙では、贈られたと思われる、
樽詰めのワインに対する礼状だ。
そのなかで、揺られて減った上に税金として持っていかれたりで、
わずかしか手元に届かなかったことを惜しむくだりがある。
注意深く品位を保ちつつも、残念さがうかがえる手紙に、
私は、ワインを愛する生身の人間バッハの魅力を感じる。
この時期は、ロ短調ミサが、大ミサとして加筆されていた時期で、
白内障手術の経過が悪く、亡くなる2年前のこと。
執刀したイギリス人眼科医、ジョン・テイラーの記録もあるが、
それは、また、別の機会に。
公文書、手紙、領収書など、『バッハドキュメント』全4巻は、
こうした生きたバッハの姿を浮かび上がらせてくれる。