子供の頃、鳩時計が欲しかった。大人になると自分で持つのは少し恥ずかしくなった。
でも、機会があれば眺めるのは好きだった。
鳩時計に電波時計的な正確さは期待していないが、かといって人形が踊ったり牛が鳴いたりのギミックも職場におくにはどうかと思った。
一番避けたかったのは、分銅や振り子を備えていながら実はクォーツです、というタイプ。
一種の詐欺だとさえ思っている。
職場が新しくなったときの祝いも、掛け時計は断った。もとより花以外の品物は付き合いの浅い業者がクリスタルの花瓶を持ってきた程度だ。そう、うるさいらしいのだ、私は。
で、5年がたち、シンプルな今の鳩時計をやっと見つけた。
160cmの床置きタイプで、動力は、時計もギミックも錘(おもり)。
ギミックはともかく、時計は錘の重さに鎖の重さが加わるから時間がたつに連れて進む傾向にある。毎朝2~3分戻し、二日に一回錘を巻き上げてやるのが習慣だ。
普段、仕事に0.1ミリ単位の精度を要求されるせいか、そのアバウトさがまた好ましい。
が、なにやら頑固爺への道をまっしぐらのようで、我ながらちょっと怖い気もしている。